Guitar Solos / Fred Frith


新年にふさわしいアルバムを紹介しよう。鬼才フレッド・フリスのギター・アルバム。このアルバムの一曲目「HelloMusic」を聴いて感動を覚えないとすれば、もう音楽など聴くのは止めたほうがいい。

裏ジャケットにはギターを弾くフレッド・フリスの手元の写真が大きく写っている。ギターはギブソン・タイプでピックアップはハムバッキング。そのピックアップのすぐ上では、弦を電気部品のミノムシ・クリップで挟んである。弦を弾く右手に持っているのは銀色に輝く大きな金属板。これらのシンプルなアイテムから、すさまじいサウンドが生まれてくる。

フリス自身によると思われる、次のような記述がある。これは無伴奏のギター・アルバムだ。ロンドンのカレイドフォン・スタジオで4日間で作られた。すべての曲は即興で、あるものは完成度高く感じられ、あるものはラフだと思われるかも知れない。最後の曲「No Birds」を除き、オーバーダブは一切していない。だからこれらの音楽は演奏するのに難しかった。「No Birds」は2つのパートからできているが、ただ2つの音を取り除いただけだ。どの曲でもギターあるいはプリペアード・ギターは普通には演奏されていない。トラック4と7、8にはファズ・ボックスを使い、トラック8ではエコー・ディレイを使った。7曲目の「Heat c/w Moment」ではノイズを加えたが、これは演奏中に吐いた息と足の音だ。またトラック8の「No Birds」は、中間部分で2台のギターを同時に弾いている。

「オーバーダブは一切していない」と言われて信じられるだろうか。もしそれが本当なら、手が4本、または指が20本以上あるに違いない。エフェクトさえごく簡単なものしか使われていないというが、随所に聴かれる奥深いサウンドは、どう考えても生のギターから作られる音とは思えない。

この恐るべきアルバムは1974年にCarolineRecords/VirginRecordsLtd.から発売された英盤のアナログ・レコード。「GuitarSolos2」「GuitarSolos3」と続編が作られたようだが、俺はこれ以外には「3」しか聴いたことがない。

1999.1.1